“渋さの意味を、君は知っているか”──INCEPTIONナオキが語る、ストリートとカルチャーの現在地
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──この人は、かっこよすぎた。
でも、本当にかっこいい人って、迷ってるときにも、その輪郭がにじみ出る。
変わり続けなきゃいけない商売のなかで、変わらず持ち続けている“信念”を、どうにかして聞いてみたかった。
場所は姫路城のすぐ近く。駅からは少し歩くけれど、大手門までは徒歩数分。
観光の中心地にありながら、ローカルのカルチャーとも地続きな場所。
そのちょうどいい距離感に、INCEPTIONはひっそりと佇んでいた。──
「ファッションの話は、カルチャーの話だと思っている」
ナオキが話すとき、空気が少しだけ引き締まる。
姫路のセントラルストリートに佇むセレクトショップ「INCEPTION」。
店主・ナオキの語りは、今どき珍しい“カルチャー由来”の温度感を纏っていた。
でも今、彼は迷っている。
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「ストリートの熱が、少し下がってる気がしてて」
インバウンド需要で結果が出た2024年。
けれど、国内では明らかに“熱”が揺らいでいる。
「スニーカーブームの終息やと思うんですけど、日本人のファッション熱はちょっと冷めてきてますね。Z世代はまた別の文脈に動いてる」
その変化をナオキは肌で感じている。
そして彼は“時代の変化とともに変えていきたい”と考えている。
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「極端に舵を切ると、今までのお客さんをがっかりさせてしまう」
だから、INCEPTIONが挑戦しているのは「グラデーションの舵取り」だ。
若い世代のカルチャーに寄り添いながら、新しい価値を提案しつつ、これまでのストリートの矜持も保ちたい。
それは一見器用に見えて、時間がかかってもとことん顧客と向き合いとにかく寄り添う、”ビジネスマンとしては”とても不器用な試みかもしれない。
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「イベントをやって、お客さんが増えるわけじゃないんです。でも“伝わる”んですよね」
ナオキが主催・協賛を続けるBMX・格闘技イベント。
その目的は「集客」でも「売上」でもなく、もっと曖昧で確かな何か──
「“かっこいい”が、きっかけになったらいい。
その入り口として、ファッションがあり、カルチャーがある。
ファッションは、カルチャーと若者をつなぐ“言語”やと思ってます」
カルチャーは“継承”と“共存”
姫路のローカル・カルチャーの底上げをしたいと考えているナオキが恐れていることがある。
それは世代間の断絶。
だから、上の世代にはこう伝えたい。
「自分の好きなものを押し付けるんじゃなくて、若い子が好きなものも、認めてあげられる大人でいてほしい。共存する伝え方があるはずやって」

アンダーグラウンドから育ってきたカルチャーがある。
Z世代に伝えたいのは、スキルの話じゃない。
「スキルやテクニックだけでなく、見せるスタイルとしてファッションにも拘って欲しい。」
ナオキはそう静かに語った。
競技としてのレベルは年々上がっている。
でも、ただ上手ければいいってわけじゃない。
「技だけじゃなく、ファッションも含めて“その人らしさ”が出てたら最高やと思う。」
何を着るか、どんな雰囲気をまとっているか──
そこにこそ、その人が歩んできた背景や、美意識がにじむ。
見ている側は、技の先にある“スタイル”に、無意識のうちに惹かれているのかもしれない。
テクニックと“らしさ”が掛け合わされたとき、初めてカルチャーになる。
それが──
INCEPTIONが挑戦をし続ける理由だ。
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✍️ 編集後記:境界をにじませるセレクトショップ
INCEPTIONは、服だけを売っている店じゃない。
ストリートの“前提”を、世代を超えて翻訳しようとしている場所だ。
迷い、足を止め、それでも“架け橋”を作ろうとしているナオキさん。
その揺れる姿勢に、ローファイな「かっこよさ」が宿っていた。
選ばれたものより、“選び続けてきたこと”にこそ物語がある。
ナオキさんは、確かに器用には振る舞えないかもしれない。
でも、だからこそ彼が差し出す“スタイル”には、嘘がない。
カルチャーは、そういう人の背中から、また始まっていく。──
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🏷 ローファイタグ:
#洗いざらしの哲学
#無地に込めた輪郭
#街角で鳴ってた音
#クセのない服に宿る癖
#スニーカーは語らない
#タグのない信念
#静かな違和感
#選ぶって、祈ることに近い
取材・文・構成:Lo-Fi HIMEJI 編集部 写真:Lo-Fi HIMEJI 撮影班
INCEPTION
セレクトショップ
〒670-0012 兵庫県姫路市本町68 タイメイクビル 1階 南室
TEL:079-287-6534
Instagram:https://www.instagram.com/inception_himeji/
営業時間:10:00〜18:00
